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「人手不足倒産」が4割増で過去最高に、企業努力ではもう止められない

10/2(火) 6:10配信

ビジネス+IT
「人手不足倒産」が4割増で過去最高に、企業努力ではもう止められない

運営していた社会福祉法人の倒産で別の社会福祉法人が経営を引き継いだ堺市のデイサービスセンター。人手不足倒産は全国で急増している(写真:筆者撮影)

 有効求人倍率が44年ぶりの高水準を記録するなど労働需給がひっ迫する中、従業員の離職や採用難など人手不足による収益悪化で倒産する企業が全国で急増している。2018年上半期は前年同期比4割増のハイペースで、慢性的な人手不足が続く道路貨物運送や介護、木造建築工事などの業種を中心に倒産ラッシュの様相を示した。地方の急激な人口減少や雇用のミスマッチもあり、人手不足に回復の気配は見えない。関西大社会安全学部の亀井克之教授(リスクマネジメント論)は「現状の打開は中小企業だけでは難しい。社会を挙げて対策を講じるしか解決策はない」とみている。

【詳細な図や写真】従業員が不足している企業の割合(図版:帝国データバンク「人不足に対する企業の動向調査」から筆者作成)

●人材確保がままならず、倒産する事業所が続出

 東北、関東地方で貨物自動車運送をしていた仙台市宮城野区のサンワ物流と関連会社のサンワ商事は5月、仙台地裁から破産手続き開始の決定を受けた。負債総額は約2億円に上る。

 民間信用調査機関の帝国データバンクによると、サンワ物流は自社トラックでビール、飲料品などの搬送をし、2009年9月期で年間約4億円の収入があった。サンワ商事は一般貨物の運送取り次ぎをし、2014年3月期決算で年間収入約3億3,000万円を計上していた。

 しかし、近年はドライバー不足が深刻で、求人を出しても集まらない状況が続いていた。このため、競合の激化で受注単価が低迷する中、ドライバー不足で受注を見合わせるケースが相次ぎ、業績が落ち込んでいた。

 堺市堺区で高齢者の介護、福祉事業を営んでいた社会福祉法人美亘会は2017年6月、民事再生開始の決定を受けた。民間信用調査機関の東京商工リサーチによると、負債額は約8,000万円で、デイサービスセンターなどは、2017年9月から堺市の別の社会福祉法人に引き継がれている。

 美亘会の事業報告などによると、2012年3月期には約1億3,000万円の事業収入があったほか、2015年度で7,430人のデイサービス利用者、6,452人のヘルパー利用者がいた。しかし、介護職員らの入れ替わりが激しく、採用しても賃金の高い他の施設に移るなど長続きしなかった。その結果、慢性的な人手不足と人件費増などで赤字経営に陥っていた。

 北海道で23の介護施設などを運営していた札幌市西区のほくおうサービスとグループ4社は2017年7月、札幌地裁に破産を申請した。東京商工リサーチによると、連結の負債総額は約43億3,000万円に上る。

 ほくおうサービスは2016年3月期で約27億6,800万円の売り上げがあったが、介護報酬の引き下げや人手不足による人件費高騰が経営を圧迫、4億8,300万円の赤字を出していた。

 施設の大半は福岡市に本社を置く介護施設運営会社に引き継がれたが、8施設は交渉がまとまらず、急いで別の施設を探さなければならない入所者が約340人に及んだ。実母を旭川市の施設に入所させていた主婦(63)は「人手不足と聞いていたが、まさかこんなことになるとは」と今も驚きを隠せない。

●企業の人手不足感も高まる一方

 厚生労働省のまとめでは、国内の有効求人倍率は2017年度、1.54倍に達し、44年ぶりの高水準を記録した。2018年度に入っても4月1.59倍、5月1.60倍、6月1.62倍、7月1.63倍と上昇を続け、企業の人手不足感が高まる一方だ。

 帝国データバンクが7月、全国の企業9,979社を対象に実施したアンケートでは、正社員の人手不足を訴えた企業は前年同期比5.5ポイント増で、過去最高の50.9%に上った。非正社員については前年同期比3.6ポイント増の33.0%が「不足している」と答えている。人手不足が人件費の増加や事業遂行の妨げとなり、収益を悪化させる例も急増している。


 帝国データバンクが2018年上半期に人手不足による収益悪化などを要因に倒産した事業者を調べたところ、前年同期を21件上回る70件に達することが分かった。2016年以前と比較すると、ほぼ1年間に発生する件数以上を半年で記録し、年間100件を初めて超えた2017年を上回るハイペースだ。負債総額は106億7,700万円に上る。

調査を開始した2013年以来の累計で見ると、業種別で人手不足倒産が多いのは道路貨物運送、介護、木造建築工事がトップ3。ドライバーや介護スタッフ、職人の不足から新規受注を断念し、収益を悪化させた例が目立つ。人件費の高騰、外注費の増大も企業にとって頭が痛い。


 地域別では東京都が最も多く、福岡県、大阪府が続く。負債規模別では1億円未満の小規模倒産の増加が目立ち、規模が小さくなるほど深刻な影響が出ていることをうかがわせた。

 兵庫県尼崎市に本社を置く陸運会社は度々、ドライバーの募集をかけているが、問い合わせの電話もほとんどないという。担当者は「ドライバーの高齢化が進む中、広告費だけがかさんでいる。人が集まらないと新規の仕事も受けられない」と不安げな表情を見せた。

 さらに、経団連の中西宏明会長が企業の新卒採用活動解禁日などを定めた就活ルールを廃止する意向を示したのをきっかけに、就活ルールに対する議論が湧き上がっている。廃止となれば中小企業の採用にしわ寄せが及ぶのは確実で、ますます人手不足が深刻さを増しそうな状況だ。

 人手不足を要因としないものも含めた倒産件数全体は好景気に支えられ、前年同期を下回っている。帝国データバンク情報企画課は「人手不足の深刻化に歯止めがかかる気配は見えない。今後も厳しい状況が続くのではないか」との見方を示した。

●中小企業の人手不足が社会全体の危機に

 介護業界では外国人労働者を確保して人手不足をしのごうとする動きが活発化している。介護労働安定センターの2017年度実態調査では、外国人を受け入れた事業所が5%に上った。しかし、焼け石に水の状況で、67%の事業所が人手不足に陥っている。

 厚労省は特に人手不足が深刻な介護、建設などの業界に対し、魅力ある職場づくりを進める雇用管理改善、ロボットやICTの導入、求人と求職のマッチングなど幅広い支援を手がけている。

 建設業界に対しては、国土交通省と共同で人材確保や育成をサポートする方針を示し、2019年度予算に約70の事業を概算要求した。しかし、慢性的な人手不足が続く業種は仕事のきつさと低賃金が再三、問題視されてきた。これらの問題の特効薬になるといいにくい政府の支援策がどこまで効果を上げるかについては、疑問視する声が少なくない。

 亀井教授は「社会の基盤をこれまで支えてきたのは中小企業なのに、政府や金融機関の目は大企業に向きすぎているのではないか。中小企業の人手不足を社会全体の危機と受け止め、本気で考えるべきだ」と指摘する。

 働き方改革は安倍政権の看板政策に浮上している。しかし、中小企業の人手不足を緩和し、人手不足倒産の続出を防がないことには、社会が立ち行かなくなることになりかねない。政府は人手不足倒産という形で発せられる危険信号を直視する必要がありそうだ。

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

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